高血圧症は、日本でもっとも患者数の多い生活習慣病です。今年の4月、日本高血圧学会は「高血圧治療ガイドライン2019(JSH2019)」を5年ぶりに改訂、発表しました。
2017年にアメリカの学会で高血圧の基準値が「140/90mmHg以上」から「130/80mmHg」に引き下げられましたが、2018年の欧州の学会では「基準値『140/90』で据え置き、降圧目標『130/80』未満に引き下げ」と発表されました。
もしアメリカと同様の基準値になると、日本の高血圧患者数は6,300万人、これは日本の総人口の半分にあたります。成人の6割が高血圧患者になるということで、注目の改定でした。

 

どこから「高血圧」?

今回の改定では、以下のように定義されました(いずれも診察室血圧)。
●高血圧  140/90mmHg以上
●高値血圧 130-139/80-89mmHg
●正常高値血圧   120-129/80mmHg未満
●正常血圧 120/80mmHg未満
高血圧の基準は従来通りとする一方、高血圧者および高リスクの高値血圧者は生活習慣の修正を積極的に行い必要に応じて降圧薬治療を開始することが推奨されました。また一般成人の降圧目標を「75歳未満は130/80mmHg未満、75歳以上は140/90mmHg未満」に引き下げられ、正常血圧者以外に早期段階から生活習慣の修正を促す内容となっています。

 

高血圧症のリスク

高血圧は自覚症状がほとんどありません。遺伝や食塩の過剰摂取、肥満などさまざまな要因が組み合わさって起こります。また、加齢とともに増加し、75歳以上の80%は高血圧に罹患しています。
高血圧状態が続くと血管が硬く狭くなる動脈硬化が起こり、さらに血圧が上昇することになります。高血圧でおこる主な病気には、脳血管障害(脳梗塞・動脈瘤の病気・くも膜下出血)、心臓病(心肥大・冠状動脈硬化・狭心症・心筋梗塞)、腎臓病などがあります。

 

夏場も減塩を心がけましょう

高血圧による病気の発症を防ぐためには、特に食塩制限が有効です。日本人の食生活での食塩摂取量は男性10.8g、女性9.2gと言われています(平成28年国民健康・栄養調査の結果より)。日本高血圧学会がすすめる「1日6g未満」を目標にして食塩制限をすることは、改善にも発症予防にもつながります。
薄味を心がけ、出汁やスパイス・酸味を利用した味付けの工夫、しょうゆ・味噌などを減塩タイプにする、塩分の多い加工食品(かまぼこ、ハム、ウィンナー、干物等)を控えめにするなど、子どもの頃から減塩を意識した食生活を心がけましょう。
熱中症予防には適度の塩分が必要と言われていますが、高血圧症の人は夏でも食塩制限が望まれます。①水分を多くとること②発汗が多いときには、水分とともに少量の塩分を補給する、の2点に注意してください。また、高齢者の熱中症予防はまずは「暑さ対策・水分補給」が推奨されています。温度・湿度の管理、こまめな水分補給をするように気をつけてください。

 

家庭血圧測定の継続

血圧測定には診察室で測るものと家庭で測るものとがあり、高血圧の判定では、家庭血圧にもとづくほうが優先されます。家庭血圧を診断や治療に上手に用いることで、正確に診断すること、治療の効果をより高めることができます。
家庭用の血圧計は何種類もありますが、上腕にカフを巻いて測る「上腕式血圧計」がおすすめです。朝(起床後 1 時間以内、排尿後、食前)と夜(就寝前)の1日2回測定し、その平均の血圧値を血圧手帳などに記録しましょう。血圧の数値は 5 ~7日間の平均値で判断されるため、継続して測定することが大切です。

 

日本で約4,300万人ともいわれる高血圧患者ですが、治療を受けているのは57%(2,450万)、さらに治療によって血圧が良好にコントロールされているのは50%(1,200万人)しかいないそうです。高血圧対策がいまだ不十分である現状に、専門家は「高血圧対策は個々人のレベルのみならず、社会全体で行う必要がある」と述べています。
まずは健康診断や無料の血圧計などでご自身の血圧を把握し、数値が高ければ生活習慣に気を付けたり、かかりつけ医を受診するようにしましょう。ひまわりクリニックでもご相談を承っております。

参考:日本高血圧学会 減塩委員会