冬本番、北風に吹かれるなか暖かい家に帰ってくると、ホッとした気持ちになりますよね。けれども体にとって、この屋外と屋内の急激な気温差は大きな負荷となってしまいます。

ヒートショックとは

ヒートショックとは、急激な温度変化により身体が受ける影響のことです。暖かい場所と寒い場所を行き来すると、その急激な気温差(目安として10℃以上)により血圧もまた急激に変動します。血管の収縮と拡張が頻繁に起こると心臓や血管に大きな負荷を与え、失神や不整脈・心筋梗塞を引き起こす危険もあります。



冬場の浴室には特に注意~高齢者も若者も

特に注意したいのは、冬場の浴室です。入浴という短時間のあいだに、次のような急激な気温変化と血圧の乱降下が起こります。

【暖かい居間/血圧安定】→【寒い脱衣所/血管が縮んで血圧上昇】→【寒い浴室/さらに血圧上昇】→【暖かい浴槽内/血管が広がり血圧低下】

これに体が対応できず、入浴中に意識を失ってそのまま浴槽内で溺れて亡くなるという不慮の事故が増えています。厚生労働省の研究班の発表によると、風呂場での推定死亡者数は年間約19,000人。全国の交通事故の死亡者数が2,839人(2020年警察庁発表による)なので、およそ6倍になります。大半が65歳以上の高齢者で、毎年12~4月に多く発生しています。
また、ヒートショックが原因とは限りませんが、15~44歳の死者数も全体のおよそ1割を占めています。若いからと油断せず、急激な血圧の変動が起きないようにすることがヒートショック予防につながります。


ヒートショックを防ぐには?

ヒートショックは起きてからでは遅いので、できることから予防・対策を始めていきましょう。

  1. 入浴前に脱衣所や浴室を暖めましょう。
  2. 最初にかけ湯、湯温は41度以下、湯につかる時間は10分までを目安にしましょう。
  3. 浴槽から急に立ち上がらないようにしましょう。
  4. 食後すぐの入浴や、飲酒後、医薬品服用後の入浴は避けましょう。
  5. 入浴する前に同居者に一声掛けて、意識してもらいましょう。
  6. 入浴前後に水分補給をしましょう。


浴室暖房の積極的使用、狭いスペースに置ける薄型の暖房器具を置くのも検討してみましょう。難しい場合は、シャワーでお湯張りをするのも効果的です。かけ湯は、心臓に遠い場所から、はじめに手足、その次は下半身の順番で。水分補給は、脱水症予防にも効果的です。特に高齢者の入浴の場合、浴室内で転倒事故の危険性もあります。高齢者の入浴時は、浴室に入った時間を覚えておいてください。そして時々声をかけたり、いつもより長く入っているなと感じた場合は様子を見に行きましょう。


万一、お風呂場で倒れている人がいたら……

「政府広報オンライン」では、浴槽でぐったりしている人(溺れている人)を発見した場合の応急処置を掲載しています。万一の場合、可能な範囲で対応しましょう。


  1. 浴槽の栓を抜く。大声で助けを呼び、人を集める。
  2. 入浴者を浴槽から出せるようであれば救出する。出せないときは、ふたに上半身を乗せるなどして沈まないようにする。
  3. 直ちに救急車を要請する。
  4. 浴槽から出せた場合は、両肩をたたきながら声を掛け、反応があるか確認する。反応がない場合は呼吸を確認する。
  5. 呼吸がない場合には胸骨圧迫を開始し、救急車の到着まで続ける。人工呼吸ができるようであれば、胸骨圧迫30回、人工呼吸2回を繰り返す。
  6. 政府広報オンライン:交通事故死の約2倍?!冬の入浴中の事故に要注意!



    リラックスできる場所であるお風呂で悲しい事故が起こらないように、しっかりと予防していきましょう。