文字通り「猛暑」の8月が過ぎ、夜になると虫の声が聴こえるようになりました。
しかし、引き続き厳しい残暑が続くと予報されており、まだまだ注意が必要です。特に、熱中症で搬送される患者の多くは「夜間・屋内」で発症しているため、適切な室温の調整が大切です。
前回、熱中症の一因とされる「脱水症」を防ぐには、こまめな水分補給で体内の水分量をキープすることが、最も効果的とお伝えしました。
今回はもうひとつのキーワード「温度調節」についての注意点をお伝えします。

 

「室温28℃」は「エアコン設定温度28℃」にあらず

環境省が推進する「クールビズ」とは、地球温暖化対策の一環として2005年から始まった、過度な冷房に頼らず様々な工夫をして夏を快適に過ごすライフスタイル。そのひとつの指針「28℃」という数値はよく耳にしますね。これは「エアコンの設定温度を28℃にする」のではなく「室温を28℃にする」ということです。「設定温度」を28℃にしても、部屋の広さや向き、日差しの当たり具合や周囲の環境で「室温」が28℃になるとは限らない、ということを知っておいてください。そして「室温28℃以下」と同時に「湿度50~60%」を保つことで、熱中症対策になります。

 

高齢になると温度変化を感じにくくなるため、ご自身で適切な室温・湿度をキープするのは難しくなります。
今年8月、東京23区内の熱中症により緊急搬送されたのちに死亡した人は170人、その9割超が60代以上。161人が屋内で発症、このうち142人が部屋にエアコンの設置がなく、あるいは設置されていたが使用していなかったそうです(8/24時点)

 

部屋に温湿度計を置き、家族や介護者も目を配るようにしましょう。また、高齢者の多くはエアコンの風が苦手だったり、電気代を気にしたり、特に就寝時の使用を控えたりしがちです。エアコンの風が直接当たらないように扇風機・サーキュレーターを併用する、タイマーを利用するなどの使い方をアドバイスしていきましょう。

 

さまざまな体温調節の方法

通常、体温は汗によって調節されていますが、脱水症で汗の量が減少すると発汗により体温を下げることができなくなります。水分の十分な補給と同時に、体内に蓄積された熱の放散を助けるため、以下のような工夫も効果的です。

風通しのよい服装をする(ベルトやりぼん、ネクタイ等は外す)
保冷剤・冷感タオルなどで冷やす(太い静脈がある首回り・脇の下・脚の付け根が効果的)
冷たい食材・飲料で内部から冷やす
外出時は日傘・帽子などを使って直射日光を避ける
入浴時は換気をし、41度以下のぬるめのお湯で、浸かる時間を10分以内にとどめる

 

気温&体温は毎日チェック

気温が高い日(30度以上)は熱中症の発症が増加すると言われています。特に「熱中症警戒アラート」(※関東甲信越で試行中)が出ているような猛暑日には不要不急の外出は避け、どうしても出かける際には水分補給と暑さ対策をしっかりと。
新型コロナウイルス感染症の対策も兼ねて、日頃から体温・体調不良・睡眠不足・前日の飲酒・朝食の未摂取などを毎朝確認するようにしましょう。特に今はマスク着用で喉の渇きを感じにくいことに加え、顔を中心に熱がこもりやすい状況です。例年以上に水分補給と健康状態に注意しましょう。

 

ひまわりクリニックでは訪問診療の際、口や皮膚の乾燥状態から脱水症状のチェックをしています。何か心配なことがあれば、いつでもご相談ください。