熱中症になっても、慌てず応急処置を

今年の夏は、例年以上の異常とも呼べる暑さが続いています。梅雨明け前の7月10日から16日までの1週間に熱中症で搬送された患者数は全国で8,189人、これは前週の2倍、昨年の同じ時期と比べてもおよそ2倍に増えています(総務省消防庁発表)。
このうち65歳以上の高齢者は全体の半分以上を占めていました。高齢者の熱中症は重症化することも多いため、特に注意が必要です。


症状別の対処法

熱中症の初期症状は、めまい、立ちくらみ、足の筋肉がつるなど。この段階で対処せず症状が進むと、頭痛、おう吐、ぐったりした感じになります。さらに重症化すると、意識障害、全身のけいれん、全身が熱くなる高体温などが起こり、最悪の場合、死にいたることもあります。
熱中症を疑われる場合は、落ち着いて応急処置を行いましょう。まずは大きな声で呼びかけ「意識があるか・ないか」を確認しましょう。(「体を冷やす」については、次章で詳しく説明します)

●意識がある場合

  1. 安全で涼しい場所へ移動
  2. 服やベルトを緩め、体を冷やす
  3. 自分で水を飲むように促す
    自分で飲める場合→そのまま安静に
    自分で飲めない場合→医療機関を受診

●意識がない場合 ※反応が鈍い、言動がおかしい、などの場合

  1. すぐに救急車を呼ぶ
  2. 安全で涼しい場所へ移動
  3. 服やベルトを緩め、体を冷やす
  4. ※意識がない時は、水は飲ませない。誤えんして窒息する危険がある。


身体を効果的に冷やす体の場所

体表近くに太い静脈がある場所を冷やすのが、最も効果的です。具体的には、首・腋の下・太腿のつけ根・手のひらを集中的に冷やしましょう。ここで冷やされた血液がゆっくり体内に戻っていくことで、体内の温度を下げる効果があります。保冷剤や氷枕、なければ自販機で買った冷えたペットボトルをタオルでくるんで当てましょう。意識があり自分で飲める場合は、同時に冷やした水分(経口補水液)を摂らせることで、体内から体を冷やすとともに水分補給にもなり一石二鳥です。
ちなみに、熱が出た時に額に貼るような市販のジェルタイプのシートは一時的なひんやり感はあるものの、体を冷やす効果はありません。


3.高齢者が熱中症にかかりやすい理由

高齢者は、室内で過ごすことが多く熱中症にかかりやすいといわれています。その理由は、加齢による身体の変化によるところが大きいです。体内の熱を周囲に逃がそうとする機能が低くなり深部体温が上昇しやすくなること、体温の調節機能が落ちてきて「暑い」と感じにくくなること、体内の水分量が減少すること、のどの渇きを感じにくくなったりすることで、気付かないうちに脱水症状になっている場合もあります。のどの渇きを感じていなくても、こまめに水分をとる習慣を身につけましょう。起床後・入浴前後・就寝前などの自分の日常生活の行動に合わせコップ1杯の水分補給することを習慣づけるとよいでしょう。
また、入浴時や就寝中にも体の水分は失われていき、気づかぬうちに熱中症にかかることがあります。入浴前後の十分な水分補給、寝るときは枕元に飲料を置くのもよいでしょう。


高齢者の熱中症予防のポイント

高齢者自身が注意するのはもちろん、家族やお世話をする立場の方が次の3点を気にかけ、声をかけることが大切です。

  1. 【体調】元気か、食欲はあるか、熱はないか、脇の下・口腔の乾燥具合
  2. 【具合】体重、血圧の変化、心拍数、体温
  3. 【環境】世話をする人がいない間の過ごし方、部屋の温度や湿度、風通し、換気、日当たり

特に気を付けるポイントは、①に関しては「のどの渇きが起こらなくても、早めにこまめな水分補給」です。飲料だけでなく水分の多い夏野菜や果物の摂取、また味噌汁なら発汗により失われた塩分補給も兼ねられます。
②に関しては、毎日決まった時間に計測することで変化に気付くようになるでしょう。
③に関しては、高齢者の部屋に温湿度計を置き、室温を28℃前後・湿度50~60%に保つようにします。「エアコンの冷気は体によくない」「電気代がかかる」と我慢しがちな高齢者の方は少なくありません。代わりに除湿機・扇風機などを利用したり、風が直接当たらないように風向きを調整したり、窓を少し開けて冷気を逃がすなどの工夫をしてみましょう。涼しく風通しの良い環境で過ごせるよう、周囲にいる人も注意するのが大切です。


環境省の熱中症予防情報サイトでは、令和5年度の暑さ指数(WBGT)・熱中症警戒アラートの情報提供をしています。外出する日もしない日も、毎朝こちら(環境省熱中症予防情報サイト をチェックしてみてくださいね。

<参考サイト>環境省熱中症予防情報サイト 熱中症環境保健マニュアルPDF

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