今年5月、3年ぶりに東京都内での麻しん(はしか)感染が確認されたとニュースになりました。国立感染症研究所の発表によると、5月28日までの全国で麻しん患者の報告数は計10名。内訳は東京5名、兵庫2名、茨城、神奈川、大阪で各1名となっています。
子どもの定期接種により日本で流行することはない麻しんですが、感染力が強く注意が必要なウイルスです。


麻しんとは?症状は?

麻しんはかつては「はしか」と呼ばれており。麻しんウイルスによって引き起こされる感染症です。免疫を持っていない人が感染するとほぼ100%発症するという非常に高い感染力があります。麻しんウイルスの感染経路は空気感染・飛沫感染・接触感染で、免疫のない集団に一人の発症者がいる場合には12〜14人が感染するとされています。感染すると、約10日後に発熱や咳、鼻水といった風邪のような症状があらわれます。2〜3日熱が続いた後、39℃以上の高熱と発しん。肺炎や中耳炎を合併しやすく、患者1,000人に一人の割合で脳炎が発症するといわれています。死亡する割合も1,000に一人と言われ、決して軽く見てはいけない感染症です。


MRワクチンでの予防が有効

今まで麻しんにかかったことのある人は、免疫を持っているため予防接種を受ける必要はありません。「麻しんにかかったこともなく、ワクチンを1回も受けたことのない人」は重症になりやすいので、ワクチン接種を検討しましょう。ワクチン1回の接種で、麻しん・風しん療法に対して95%の確率で十分な免疫を獲得することができます。

麻しん単独ワクチンと、麻しん・風しんの混合ワクチン(MRワクチン)がありますが、どちらも同様の効果が期待されます。むしろ風しんの予防にもつながる利点のあるMRワクチンを接種するとよいでしょう。特に30歳代後半から50歳代の男性は、風しんに対する免疫が不足またはない場合が多く、抗体価の確認もしくはワクチン接種が勧められています。
(注:これまで風しんに係る公的な予防接種を受ける機会がなかった昭和37年度~昭和53年度生まれの男性は「風しんの第5期予防接種」対象者として抗体検査が受けられ、検査の結果十分な抗体がないと判明した場合は予防接種が受けられます。どちらも自治体から送付されたクーポン券使用で2024年度まで原則無料。ひまわりクリニック・おひさまクリニックどちらも対応しておりますのでお電話ください。)

また、妊娠を希望する女性と妊婦の同居家族を対象として、風しんの免疫の有無を確認するための抗体検査を無料で受けていただくことのできる事業を多くの自治体で行っています。自治体ごとに風しん対策の補助の有無や補助の額などのあり方が異なるため、抗体検査を希望される方は、事業で検査可能な医療機関を含めて、まずは居住地域の保健所にご相談ください。ワクチン接種の一部公費助成も行っている自治体も多くあります。ただしMRワクチンは生ワクチンなので、おなかの中の赤ちゃんへの影響を避けるため、すでに妊娠中の場合は接種できません。助成を受けて接種した後も、2カ月程度の避妊が必要になる点もご注意ください。


海外渡航の予定がある場合は接種を

現在、国内での麻しんの流行はありませんが、世界ではアジアやアフリカなどで多くの患者が報告されています。それらの地域から日本への渡航者、あるいは日本人がそれらの地域で感染して帰国してくるというかたちで感染が広がるということは十分起こりうる話です。

麻しんにかかった(検査で診断された)ことがない方が海外渡航される時には、あらかじめ麻しんの予防接種歴を確認し、麻しんの予防接種を2回受けていない場合、または接種既往が不明の場合には予防接種を受けることを検討してください。
新型コロナが5類になりさまざまな制限が緩和され、海外から来られる観光客や海外旅行
へ行かれる方も増えています。3年ぶりにマスクなしで過ごすこの夏、活動的かつ健康的に楽しむためにも感染症対策をしっかり行いましょう。


〈参考WEBサイト〉