東京の都心では11月としての最高気温を100年ぶりに更新した今年の秋ですが、その後は一気に冬らしくなりましたね。空気の乾燥する冬はウイルスも活発になるため、様々な感染症対策が必要です。引き続き「手洗い・うがい・マスク着用」をしていきましょう。

2回にわたってお伝えした「高齢者と楽しく暮らすためにできること」、最終回となる今回のテーマは「住環境の整備」です。



転倒リスクを減らすことが最重要

加齢により骨がもろくなる高齢者は、ちょっと転んだだけで骨折するリスクが高くなります。それまで元気だった方が、骨折がきっかけで寝たきりになることも少なくありません。仮に骨折の症状が軽くても回復に時間がかかり、転倒による不安や恐怖で活動量が低下し、それにより転倒リスクの増加を招くという悪循環になっていきます。よって、高齢者が健やかに暮らすためには「転ばない・転ばせない」ことが最も重要になります。


転倒の内的要因と外的要因

東京消防庁のネットアンケートの結果では、高齢者の日常生活中の事故の中で最も多いのが転倒事故で、その約6割は住み慣れた自宅で起きています。転倒の要因は大きく2つ、「内的要因」と「外的要因」に分類することができます。

【内的要因】
身体的特徴に関連する能力または疾病・疾患、薬剤など。

  • 認知障害による注意機能低下
  • 白内障などによる視力低下
  • 足の裏などの感覚障害
  • 太もも、お尻などの筋力低下
  • バランス能力低下

【外的要因】
床や手すり、段差、部屋の明るさなどの環境に起因するもの。

  • 絨毯やコードなど引っかかりやすいもの
  • 玄関の上がりかまち、敷居などの段差
  • 夜間の部屋の暗さ

内的要因に関しては、適度な運動を続けて筋力・バランス感覚の低下を防ぐことが一番の対策になります。一方、外的要因は住環境を整えることでほぼ解消・カバーできるでしょう。


自宅の各所に適した整備で転倒対策を!

1.居間・寝室
高齢者の転倒事故がいちばん多い場所です。ちょっとした段差やコード類に引っかかって転倒することがあります。カーペットやこたつ布団を敷かない、電気のコードを置かないなど、段差をなくす工夫をしましょう。
ベッドは壁に面するように配置して片方からの転落リスクをなくし、万一転落しても衝撃が緩和できるよう低床のベッドに変更しましょう。ベッドガードも有効ですが、柵やベッドとのすき間に体の一部がはさまらないよう注意が必要です。

2.玄関
上がりかまちが高い玄関には踏み台を置き、三和土にスペースがある場合は靴の着脱のために椅子を置きましょう。玄関マットの下には滑り止めを敷きましょう。

3.階段・廊下
床に物を置かず、通路スペースを確保しましょう。滑りやすい靴下はスリッパの使用をやめる、夜間や暗い場所は足元がよく見えるよう照明を明るくしましょう。

4.浴室
濡れた床は特に滑りやすいので、すべりやすい床材にするか、滑り止めマットを敷きましょう。入り口の段差が高い場合は、すのこやスロープで段差を小さくしましょう。冬場は転倒対策だけでなく、ヒートショック対策として浴室と脱衣所を温めておくこともお忘れなく。


全ての場所に共通して有効な対策は、手すりの取り付けです。介護保険で住宅改修工事の費用の一部が支給されます。ケアマネジャーに相談するか、お住まいの自治体に確認してみてください。
住環境を整えることは、転倒の要因の多くを減らすことができ、結果的に健康寿命の延伸につながるといえます。積極的に改善していきましょう。


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